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ミッションステートメント

国際秩序はいま、大きな転機を迎えています。

これまで我が国を含む先進民主主義国は、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値を擁護し、共存共栄の国際秩序の形成を主導してきました。多くの国は、こうした国際秩序を前提に、国際社会の平和と安定と経済発展の果実を享受してきました。

しかし普遍的価値を共有しない一部の国家は、既存の国際秩序を毀損しようとしています。特に我が国周辺では、核・ミサイル戦力を含む軍備増強が急速に進展し、力による一方的な現状変更の圧力が高まっています。しかも科学技術の進展に伴い、宇宙、サイバーといった新しい領域をめぐる紛争が恒常的に生起しています。

こうした諸課題に対応すべく我が国は2022年、新たな国家安全保障戦略を策定し、外交、防衛、経済安全保障、技術、サイバー、海洋、宇宙、情報、エネルギー等の安全保障に関連する分野の諸政策について戦略的に取り組むことを決定しました。

これらの諸課題は当然のことながら、政府だけで解決できるものではありません。政府、学界そして民間企業との連携が必要となります。

そこで(一社)サイバー空間総合研究所(JICSS)は我が国の国家安全保障戦略を踏まえ、経済安全保障、技術、サイバーの各分野を中心に産官学の専門知識と見識を集結し、実践的な解決策の提案、コンセンサスの構築、行動促進に取り組みます。

我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しています。とりわけ世界第二位の経済大国かつ軍事支出国である中国の台頭は、インド太平洋地域の不安定要因となっています。

しかも中国は政府主導で宇宙、サイバー空間、AI、量子コンピューティング、電磁波領域などに関して最新の技術を開発し、その軍事転用を進めています。特に情報通信技術分野でのグローバルサプライチェーンにおいて中国は中心的な役割を確保しつつあり、グローバルICTサプライチェーンの安全性と信頼性を毀損しています。

そこで我が国と同盟国は、サイバー攻撃に代表される重要インフラへの脅威の増大や先端技術をめぐる主導権争いといった課題への対応に本腰を入れるようになりました。

例えば2022年5月、我が国は、重要なサプライチェーンの確保、機微技術の保護、戦略的技術開発の促進、および重要インフラのセキュリティ強化を目的とする、画期的な経済安全保障推進法を成立させました。現在、我が国は、重要新興技術に関する研究の促進や、セキュリティクリアランスシステムの拡張と刷新のための開発に幅広く取り組むことを明らかにしています。

2022年12月に策定した最新の国家安全保障戦略では、経済安全保障政策の促進を優先する方針を掲げ、特定国への過度の経済的依存を低下させ、サプライチェーンの強靭化を行う予定です。

しかしながら、インド太平洋地域での我が国の重要な戦略的役割、加えて中国の経済的技術的進展を踏まえると、これらの取組みは決して十分とは言えません。

我が国は、インド太平洋地域における米国の戦略の要として認識されています。その地理的要因と在日米軍基地の設置状況から、地域内で起こりうる安全保障上の紛争においての中心的なアクターであり、また、我が国の防衛力、特に世界有数の海上保安能力は、有事の際には国際的にも重要な役割を果たすと期待されています。

.こういった軍事的側面が国際的に広く認識されている一方で、グローバルサプライチェーン上で我が国が果たしている経済、技術上の重要な役割と潜在的な能力は十分な注目を集めているとは言えません。

我が国の海外投資の実績や、あらゆる製造分野において重用されている洗練された高品質な日本製部品・完成品の価値は計り知れず、過去(1970年代後半~1980年代)には「日本がくしゃみをすると、世界が風邪をひく」と表現されたほどです。さらに、半導体から各部品の優秀な技術だけでなく、有事において重要となる防衛関連の製造と技術基盤はなお高い水準を保っています。

加えて、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を実現・拡大する上で、我が国は不可欠な役割を果たしています。過去において、インド・太平洋諸国における貿易やインフラ開発の進展には、我が国からの投資が大きく貢献してきました。

我が国は、真に相互互恵的な国家間協力の実績を積み重ねてきたことにより、ASEAN諸国において信頼されるバートナーとして、米国や中国に負けない評価を得ています。

現下の国際社会において我が国はグローバルなリーダーと認められているものの、その一方で特定の分野においては遅れを取る存在として、矛盾する形で浮かび上がっています。

我が国は世界主要国の中でも初めて経済安全保障担当大臣を設けたほか、2022年5月に経済安全保障推進法を制定し、国際社会における経済安全保障論議を牽引してきました。

2023年5月のG7広島サミットでは、我が国のリーダーシップのもと、G7史上初めて経済安全保障に関する声明「経済的レジリエンスと経済安全保障に関する声明」が発表されました。

このように我が国は、経済安全保障において優れた包括的な方策を取っているものの、部分的には遅れを取っています。例えば、研究安全保障分野における特許の非公開制度は、米国では第二次世界大戦以来実施されていますが、我が国では2022年に制定されたばかりです。その他、内部脅威プログラムの開発、安全保障クリアランス制度の開発、防衛に関する産官学の協力促進といった分野はいまだ遅れていると見られています。

それに加え、より対応を急がれるのが、サイバーセキュリティ分野での遅れです。我が国は、サイバー分野の遅れを深刻に受け止めており、《サイバー空間の安全かつ安定した利用、特に国や重要インフラ等の安全等を確保するために、サイバー安全保障分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させる》として2022年に策定した国家安全保障戦略においても次のような対策を明記しています。

《まずは、最新のサイバー脅威に常に対応できるようにするため、政府機関のシステムを常時評価し、政府機関等の脅威対策やシステムの脆弱性等を随時是正するための仕組みを構築する。その一環として、サイバーセキュリティに関する世界最先端の概念・技術等を常に積極的に活用する。そのことにより、外交・防衛・情報の分野を始めとする政府機関等のシステムの導入から廃棄までのライフサイクルを通じた防御の強化、政府内外の人材の育成・活用の促進等を引き続き図る》

《その上で、武力攻撃に至らないものの、国、重要インフラ等に対する安全保障上の懸念を生じさせる重大なサイバー攻撃のおそれがある場合、これを未然に排除し、また、このようなサイバー攻撃が発生した場合の被害の拡大を防止するために能動的サイバー防御を導入する。そのために、サイバー安全保障分野における情報収集・分析能力を強化するとともに、能動的サイバー防御の実施のための体制を整備する》

《さらに、同盟国・同志国等と連携した形での情報収集・分析の強化、攻撃者の特定とその公表、国際的な枠組み・ルールの形成等のために引き続き取り組む》

この新しい国家安全保障戦略のもと、我が国ではサイバーセキュリティ分野での国内法の整備と政府の態勢拡充、国際的な枠組みの形成、そして専門家の養成が急速に進められています。この国家戦略に対応して我が国の経済界もアカデミズムもまた、新たなルールの構築と態勢拡充に向けて動きを強めています。だからこそ産学官民の連携、協調が必要とされているのです。

2024年、JICSSは以下の3つのサイバーセキュリティ・ミッションを掲げつつ、ホワイトペーパーの作成、直接的な提言活動、産学官民イベントの開催を行います。

  1. 同盟諸国間における、経済安全保障および国家安全保障サイバー政策の理解と連携の深化。

  2. 経済安全保障および国家安全保障に焦点を当てたサイバーセキュリティ・ソートリーダーシップの共有。

  3. 我が国のサイバースキルおよびキャパシティビルディングの必要性に対応するための官民のパートナーシップの振興。

2024年1月、その発起を記念し、JICSSはチャタムハウスルールに基づいたラウンドテーブルを開催しました。2024年3月には最初のホワイトペーパーとしてその成果を発表しました。

当研究所では、このような取組みにご賛同、ご支援いただける産官学のご関係者を心より歓迎いたします。 ご関心の向きは、事務局info@jicss.orgまでお問合せ下さいませ。

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